白色申告に必要な資料と注意点とは?

白色申告に必要な資料と注意点とは?

 自営業者やフリーランスの方が毎年所得を申告する際の申告方法として「白色申告」と「青色申告」があります。ここでは白色申告と青色申告との違いや白色申告のメリット・デメリット、白色申告に必要な書類、白色申告の手続きなど、白色申告を考えたいと思います。

 

白色申告に必要な3つの資料

「収入・支出など取引の記録と書類の保存」と「決算」に基づいて収支計算書を作成しその他の情報も含めて確定申告書(B)を作成し、収支内訳書とともに確定申告書を税務署へ提出し、納税を行います。

 

■確定申告書B

確定申告書には(A)と(B)があり、確定申告書(A)は会社員の方が確定申告をする際に必要である項目に絞った項目のみ記載されおり、確定申告書(B)は全ての項目が記載されており、白色申告を行う場合は通常この確定申告書(B)を使用します。

 

確定申告書(B)の見本(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/h25/02.pdf

 

確定申告書を作成の際は国税庁の確定申告書作成ページから必要な金額を入力すると税額まで計算され、これを印刷して提出することができます。

また、入力した金額に関して添付する書類(源泉徴収票や社会保険料、生命保険料など)については、確定申告書の印刷を行うと確定申告書(B)の次に添付書類台紙のページが印刷されますので所定のところに書類を添付し、確定申告書とともに税務署に提出します。

 

■確定申告書に添付する各種控除関係の書類

確定申告書とともに提出する必要はありませんが、確定申告書を作成するための収入金額や必要経費を記載した帳簿、取引に伴って作成した帳簿、請求書・領収書などの書類を整理して保存する必要があります。

 

<帳簿・書類の保存期間について>

(帳簿)

収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)・・・7年

業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)・・・5年

(書類)

決算に関して作成した棚卸表その他の書類・・・5年

業務に関して作成又は受領した請求書、納品書、領収書などの書類・・・5年

(一定の要件を満たした電子計算機を使用して作成する帳簿及び書類などの電磁的記録をもって、帳簿書類などの保存に代えることができます)

 

■収支内訳書

売上金額などの収入金額、売上原価、給料や減価償却費、旅費交通費などの経費について

それぞれ項目ごとに1年分の合計額を記入するようになっており、これらを差し引きすることによって所得金額が求められるようになっています。

(給料、報酬、売上、仕入などについては合計金額以外にそれぞれ明細を記載する欄があります)

 

収支内訳書の見本(国税庁)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/shinkokusho/pdf/h28/07.pdf

 

白色申告の注意点

白色申告は、青色申告のように事前に青色申告承認申請書の提出も必要ありませんし、正規の簿記の原則による複式簿記で記帳を行う必要もないため、記帳等の事務負担が少なく済みます。

例えば、青色申告の場合は取引一件、一件を仕訳し記帳する必要がありますが、白色申告は収支内訳書等を使用して1年分の収支を合計して簡単に記帳することができます。

白色申告と青色申告との違いを簡単にまとめると……

・青色申告は事前に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出する必要がある

・青色申告の記帳は年末に貸借対照表や損益計算書が作成できる正規の簿記の原則(複式簿記)により行うことが原則である(一部の簡易な帳簿によることも認められている)

と、白色申告は青色申告に比べて細かな記帳ではなく簡略された方法により記帳することが認められています。

 

しかし、収入や支出などの取引の記録を行わなくて良いわけではありません。白色申告も青色申告も「一年間の収入や支出から所得を計算し、税額を計算する」という最終目的は変わりません。この点については十分注意していただき正しい正確な申告を行えるようにしてください。

 

<参考:青色申告で受けられる主な各種控除>

A、青色申告特別控除

所定の事業を営んでいる青色申告者で、この所得について取引を正規の簿記の原則、(複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して法定申告期限内に提出している場合に原則として最高65万円を控除するものです。(なお、白色申告の場合は上記金額が10万円となっています)

 

B、青色事業専従者給与

青色申告者と生計を一にしている配偶者やその他の親族のうち、年齢が15歳以上で、その青色申告者の事業に主として従事している人に支払った給与は、事前提出の届出書に記載された金額の範囲内でかつ専従者の労務の対価として適正な金額であれば、必要経費に算入する(経費として認められる)ことができるというものです。(なお、青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれませんので注意が必要です)

 

C、貸倒引当金

事業所得を得る事業を営んでいる青色申告者で、その事業を行っている中で 発生した売掛金、貸付金などの貸金の貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価額の合計額の一定の金額を貸倒引当金勘定へ繰り入れたときは、その金額を必要経費として認めるというものです。

 

D、純損失の繰越しと繰戻し

  事業所得などに損失(赤字)の金額がある場合、損益通算の規定を適用しても 控除しきれない部分の金額(純損失の金額)があるときには、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越して、各年分の所得金額から控除できるものです。

上記方法ではなく、赤字の年の前年に青色申告をしている場合、純損失の繰越しに代えて、その損失額を生じた年の前年に繰り戻して、前年分の所得税の還付を受けることもできます。

 

白色申告の大きな流れとしては、「収入・支出など取引の記録と書類の保存」⇒「決算」⇒「収支内訳書・確定申告書の作成」となります。


「収入・支出など取引の記録と書類の保存」

収入や支出などの取引の記録と保存については、白色申告は青色申告に比べて簡便な

方法が認められているので、取引の頻度に応じて1日、一週間、半月、毎月ごとにまとめて記録することができます。

また、記録した取引に関わる請求書、領収書などの書類は記録を行ったらすぐファイリング等を行っておくと二重計上等の誤りを防止することができます。

 

「決算」

一年間の取引が終了したら、確定申告書を作成するための決算作業を行います。主な作業としては、商品等の棚卸や減価償却費の計算が挙げられます。

 

■雑所得と事業所得の違いとは?

所得税を計算するには所得税法上所得をその性質上10種類※に分けて計算しています。

※10種類の所得「利子所得」「配当所得」「不動産所得」「事業所得」「給与所得」「退職所得」「山林所得」「譲渡所得」「一時所得」「雑所得」

 

このうち事業所得と雑所得について見てみましょう。


事業所得とは農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる方のその事業から生じた所得のことをいいます。

一方、雑所得とは雑所得以外の9種類の所得のいずれにも当てはまらない所得で、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の方が受け取った原稿料や印税、講演料や放送謝金などがあります。

事業所得の重要なキーワードは「事業を営む」でまさしく商売を行っている方の所得についてこの事業所得に分類され所得税が課税されます。雑所得は公的年金等や本業でない著述家や作家の方が受け取った原稿料や印税、講演料などが雑所得に分類され所得税が課税されます。自営業者やフリーランスの方は本業としてそれぞれの事業を営んでいるというところから事業所得に該当します。

 

まとめ

 自営業者やフリーランスの方が初めて確定申告する際、簿記等の知識がある場合には 大きな問題がなく日々の収入・支出などの取引について記録し、書類の保存を行うことができるかと思いますが、簿記等の知識がない場合には何をどのようにして良いかわからない点も多いかと思います。自営業者やフリーランスとして活動を初めて行う場合には取引先の開拓などの営業活動も大事ですが、一年間の結果を申告する方法、手続きについても事前に確認の上、年度末になって慌てることのないように準備を行ってください。

また、日々の取引記録や確定申告に慣れてきたら、各種控除が受けられる青色申告を活用することも検討してみましょう。

 


この記事を書いた人

大間 武 ファイナンシャル・プランナー 多業種の財務経理、株式公開予定企業などの経理業務構築、ベンチャーキャピタル投資事業組合運営管理を経て、2002年ファイナンシャル・プランナーとして独立。「家計」「会計」「監査」の3領域を活用した家計相談、会計コンサル、監査関連業務、講師・講演、執筆など幅広く活動中。

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